塔の島から喜撰橋を渡ると宇治川の左岸となる。
この橋から左に折れて、花やしき浮舟園がある旅館街を抜け、その外れに49帖「宿木」の古蹟がある。(宇治十帖(五))
この橋から左に折れて、花やしき浮舟園がある旅館街を抜け、その外れに49帖「宿木」の古蹟がある。(宇治十帖(五))
四十九帖「宿木」は、(薫24歳春-26歳4月)
匂宮と六の君(夕霧の娘)が結婚し、懐妊中の中の君は行末を不安に思う。
それを慰めるうちに彼女に恋情を抱きはじめた薫に中の君は当惑するが、無事男子を出産して安定した地位を得る。
一方で薫は女二宮(今上帝の皇女)と結婚するが傷心はなぐさまない。
しかし初瀬詣の折に、故大君生写しの異母妹浮舟を垣間見て、心を動かされるのだった。
出典:【Wikipedia源氏物語あらすじ】より
与謝野晶子は、
「あふけなく 大御むすめを いにしへの 人に似よとも 思ひけるかな」(晶子)と詠んだ。
駒札には、
『亡き大君を忘れかねる薫君は、いつしか現し身の中君におもいをよせるようになった。
中君はその心情に絆されはするが「うとましく」も思われる。
二条院に中君を訪れた薫君は、宇治に大君の人形を造り勤行したいと語る。
中君は異母妹の浮舟が大君によく似通っていることを告げる。
秋、薫君は宇治の山荘を御堂に改造することとし、弁尼を訪れる。
そして共に大君の思い出に浸り、「宿りきと 思い出でずば 木のもとの 旅寝もいかに 寂しからまし」と口ずさみ、紅葉を中君への土産にお持たせになり匂宮に恨まれる。
中君は男子御出産、薫君も心すすまぬまま、女二宮と結婚された。
其の後、宇治を訪れた薫君は、偶然、浮舟を覗き見て、大君と全く瓜二つなのに驚き、強く心をひかれてゆく。』
出典:【源氏物語 宇治十帖(五)宿木の駒札】より
宿木の古蹟は町中を抜け、その先に進むと天ヶ瀬ダムへと続く道の側に建っている。
この「宿木」の巻は、薫君が浮舟を見初めるくだりなのだが、恋の橋渡しを頼むのが弁尼なのだが、このときに薫と弁尼が詠み交わした歌、
「やどりきと思ひ出でずは 木のもとの旅寝もいかにさびしからまし」(宿木の昔泊まった家と思い出さなかったら、木の下の旅寝もどんなにか寂しかったことでしょう)
「荒れ果つる朽木のもとをやどりきと思ひおきけるほどのかなしさ」(荒れ果てた朽木のもとを、昔の泊まった家と思っていてくださるのが悲しいことです)がこの巻の名になっている。
この宿木の古蹟は少し離れた寂しい場所なのだが、紅葉の落ち葉を送るという内容から、少し寂しい場所を選んだのであろうか。
-2008.10.07-
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