近衛邸跡に枝垂桜の大木が多く植えられている。
京都御苑の中で一番早く、3月中旬には咲き始め、桜の種類も多く4月にかけて桜の花を楽しむことが出来る。


01糸桜(1)min
その中でも近衛池近くの桜は「近衛の糸桜」と呼ばれ、江戸時代から有名だったようである。
謡曲「西行桜」に一説に、桜の老木の精と西行が桜の美しさについて、
「九重に、咲けども花の八重桜、いく代の春を重ぬらん。
しかるに、花の名高きは、まづ初花を急ぐなる、近衛殿の糸桜。見渡せば柳桜をこきまぜ て、都は春の錦、燦爛(さんらん)たり。
千本(ちもと)の桜を植え置き、その色を所の名に見する、千本(せんぼん)の花盛り、雲路の雪に残るらん。」
と近衛邸の糸桜の名が出て来るのだが、この桜は御苑にあった糸桜ではなく、近衛家創建当初の、現在、同志社新町キャンパスのある辺りに近衛家の屋敷があり、そこに植えられていた糸桜(枝垂桜)のようである。

02位と桜(2)min
糸桜を詠んだ和歌で、安政2年(1855)2月に、高邁天皇が詠んだ、
「昔より名には聞けども今日見ればむべ目かれせぬ糸桜かな」という歌がある。
(昔から聞いてはいたが、今日見ると目も離すことが出来ないほどに美しい桜である)と、孝明天皇も近衛家の糸桜を見て、その美しさに感動したのであろう。
この時の桜は、御苑の北に近衛家が移った後の桜であろうと想像に難くない。現在の7桜は昭和10年に移植されたもので、孝明天皇が愛でた桜ではない。