一条戻り橋には、また源頼光

(みなもとのよりみち又はらいこう:平安中期の武将で、摂津国多田で初めて武士の支配を形成し、その地名から摂津源氏と呼ばれる)

の四天王のひとり渡辺綱(坂田金時・卜部季武・碓井貞光の三人と渡辺綱を源頼光の四天王という)が、鬼女に会った話が残っている。



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渡辺綱が頼光の使いで一条大宮へ行った帰りの夜半、一条戻り橋に差し掛かると、

女がひとり佇んでおり「五条辺りまで送って」と頼まれ、綱はその女を馬に乗せ暫く走ると、「家は都の外だ」と言い、

綱が「何処へでも送り申そう」と答えるやいなや、女は恐ろしい鬼の形相に姿を変え、「我が行くところは愛宕山」と言うと、

綱の髻(もとどり:まげ)を掴み、西北の空へと飛び上るのだが、綱は慌てることもなく頼光より授かった「髷切の太刀」で、

鬼の腕を切り落とし、自身は北野神社の矢ねに落ち、鬼女は愛宕山の方へと去ってゆくのである。



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後日、その腕を安部清明に見せ吉兆を占ってもらうと「大凶」。

綱は七日間物忌みが必要で、仁王経を唱え、鬼の腕を封じる必要があるという。

綱は言われたとおり、七日間の物忌み入るのだが、

六日目に義母が綱に会いに上洛すると、潔斎を破って義母に会い、清明が封じた鬼の腕を見せるのだが・・・

ところが義母だと信じていた女が、実は腕を切り落とされた鬼女であり、「この腕は自分のものだ」と言うと、その腕を持ち西の空へ飛び去ったという。

戻り橋にまつわる、もう一つの怪奇である。