千姫のお墓のその先にあるのが「濡髪大明神」の祠である。ここは知恩院でも奥の奥にあり訪れる人は少ないのだが、知る人じ知る縁結びの明神で、ひっそりと手を合わせ、愛願成就を願う人がいる。
この神社の由来をみると、
『千姫の墓を奥へ進んだ所に、「濡髪大明神」の祠があります。ここには、知恩院を火災から守る濡髪童子をお祀りしています。
また「濡髪」という名のため、昔から祇園町の綺麗どころの信仰を集め、縁結びの明神様として参詣者が後を絶ちません。
ここに置かれている、護摩木に願い事を書いておくと、毎年11月15日午後2時から行われる濡髪大祭(お火焚き)で、願い事が叶うよう焚き上げてくれるそうです。』
出典 濡髪大明神にあった説明文
とあり、またここに祀られた白狐にまつわる言い伝えが、
『江戸時代のはじめ、徳川三代将軍 家光の頃のこと。建設中の御影堂完成も間近となった知恩院で、ある日、大勢の善男善女を前に第32世 霊厳上人がお説教をしていました。
その日は雨だったといいます。ふと上人が見ると、聴衆の中に一人の童子が傘もささずにやって来たらしく、びっしょりと雨に濡れていました。
お説教が終わってから、上人は見慣れぬ童子に声をかけました「そなたはどこのお子じゃな?」
童子は答えました「私はこの御影堂を建てている所にあった、穴に住んでいたキツネでございます。
御影堂のおかげで住処を壊され、仕返しをしてやろうと思っていましたが、お説教を聴いているうちに、間違っていることがわかりました・・・。」と、目に涙をいっぱいためて上人を見上げました。
上人はキツネを哀れみ、傘を貸してやり、そして「おまえの神通力で、このお寺を守っておくれ」と頼みました。
こうして濡髪童子として現れた白狐は勢至堂の奥に祠をいただくことになり、濡髪大明神として現在も祀られている。
そして、この時に借りた傘が有名な御影堂の「忘れ傘」であると伝えられています。』と書かれている。
出典 白狐にまつわる伝説
濡髪大明神の御籤として、12の吉凶が57577の短歌にのせて、大吉から凶まで、その内容は明日への希みをつなげているようで、面白かったので載せてみる。
壱 (大吉)正直に心をこめて願いなば われも力を添えて守らん
弐 (半吉)おそくともかけし願いは叶うらん 朝夕運ぶ心づくしに
参 (吉) 願うこと今は堪えなん折柄に 又思わざる便りもとむる
四 (凶) 今日よりも明日を大事に心にて しばしのうちも油断いたすな
五 (吉) 何事もおのが心のすなおにて 雲の上まで登る道あり
六 (凶) 我が思う道をば直に立てずとも 人の情けは受けてゆくべし
七 (吉) 思うこと今は望みの如くにて 叶う時節を得たる嬉しさ
八 (凶) 急がずに時の至るを待ちおれば やがて花咲く春の来るなり
九 (吉) つねならぬ思いを胸に抱けども 願う甲斐ある後のよろこび
十 (凶) 何事も心のままになら坂や 道はかどらぬ老の足どり
十一(半吉)今朝までは花の蕾を明日も又 思いのままに開くなるべし
十二(大吉)晴れてゆく雲井に願いかけ橋を 渡り初めたる身こそ楽しき
出典 濡髪大明神 御籤
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