勢至堂の横をさらに奥へと歩くと、一際目立つ大きな石塔がある。これが千姫の墓だという供養塔である。 |
千姫とは、徳川二代将軍秀忠と継室の江との間に産まれた子供で、母の江のように数奇な定めを生きた女性である。 |
千姫を語る前に、その母・江について調べてみようと思う。 |
江の母は、織田信長の妹・お市の方で、 |
(お市は浅井家が織田信長に滅ぼされるると、柴田勝家のもとに嫁ぐのだが、信長亡き後に秀吉と対立し、勝家とともに福井の北ノ庄城で自害する) |
浅井長政に嫁いで三女をもうけ、長女は秀吉の愛妾となる淀殿(茶々)、次女は京極高次の正室となる常高院(初)で、 |
千姫の母・江は三女で、最初は信長の家臣・佐治一成に嫁ぐが、秀吉の思惑で離縁をさせられ、 |
秀吉の甥の豊臣秀勝(姉の子で秀次の弟)に嫁がされ、秀勝が朝鮮との戦で病没すると、秀吉は絵を徳川秀忠の継室として、嫁がせる。 |
ここで江は、千姫を頭に三代将軍となる家光や忠長など2男5女を産んでいる。 |
忠長については、菊池寛の「忠長卿行状記」など面白い話があるのだが、ここは千姫の話に戻ることにする。 |
千姫は秀忠と江の長女として慶長2年(1597)に生まれ、7才で豊臣秀頼に嫁ぎ大坂城へと入る。 |
18年後の慶長20年(1615)の大坂夏の陣では、家康が、落城する大坂城から、孫の千姫可愛さから、 |
城から助け出したものに千姫を与えると言い、その時に、坂崎出羽守直盛が火中の大坂城に入り千姫を助けたという、 |
講談師見てきたような嘘を言うの例えで話が進んでゆき、 |
坂崎出羽はてっきり自分に千姫が与えられるものと思いこんだが、千姫が火傷の跡をみて嫌がったことから、家康が本多忠刻に嫁がせることにした。 |
これを知った坂崎出羽が千姫奪還を企て、それが発覚して切腹させられたとも、家臣に寝込みを襲われたとも、面白可笑しく映画の格好の題材となっている。 |
いつの世も子供より孫が可愛いというのは、世の常なのであろうか。そんな千姫の墓とされる石塔が、知恩院の奥まった所にひっそりと建っているのである。 |
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