正伝寺方丈の広縁に座ると、目の前には比叡山を借景とした、獅子の児渡しの庭がある。

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獅子の児渡しの庭は、江戸初期に小堀遠州によって作庭されたものだと言われ、白砂に一つの石も用いず、サツキの刈り込みで右から7・5・3と配した枯山水の庭である。

遠景に比叡の霊峰を眺めることが出来、ひとときの心の静けさを味わうことができる庭となっている。

訪れる人も少なく、ゆっくりとした時の流れが世のうつろいを忘れさせてくれる。

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正伝寺の庭が「獅子の児渡しの庭」と呼ばれているのは、中国の故事に曰く、

『獅子は三頭の子を産むと、そのうちの一匹は豹であり他の子を食おうとする。
獅子が川を渡ろうとするとき、親がいなくなると豹は他の子を食ってしまう。
さあ、獅子は三頭の子を向う岸に無事渡らせることが出来るのか。』

という、禅問答のような話である。

その話を庭に表現しているらしいのだが、凡人の自分などには、その光景がみえてこない。もっと心を無にして見ればいいのだろうが、雑念が心をよぎる。

ま、何時かこの庭を見て獅子の児渡しの景色が見えるであろうと、雑念を捨てられないまま、飽きることなく庭を眺めていた。

ちなみに龍安寺の庭は「虎の子渡しの庭」と呼ばれ、虎と獅子の違いはあれども、その心は同じなのであろう。