松尾大社は酒造りの神として崇められているのだが、その境内に「亀の井」という泉が湧く。

本殿の横を奥に入ると、松風苑三庭の庭に続く道のそばに、この「亀の井」がある。



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松尾大社はもともと、社殿の背後の松尾山に神々が降臨したとされ、その後は今も、巨大な岩石があり、古くは、日崎の峯とか鎮座場と称されて崇められていた場所であった。

元正天皇の和銅7年に、『首に三星をいただき、背に七星を負い、前足に離の卦を顕わし、後足に一支あり尾に緑毛・金色毛の雑った長さ八寸の亀』が現れ、護国鎮護を願い、それ以来、松尾大社は亀がご神縁を導くとされた。

また、亀と甕の語感から、酒造りの甕に合わせて酒造りの神として崇められるようになったという、本当のような嘘の話である。



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この「亀の井」の水を、醸造の酒に加えると、酒が腐らないと云われる。

松尾山の磐室から流れ出る神水で、全国の酒造りの所からこの水を汲みにくることはないのだが、宮尾登美子さんの「蔵」とい小説に、

目の見えなくなった娘の、烈と中風を患った父親とが、この松尾大社に詣で、この亀井の水を小さな徳利に入れて帰るという件(くだり)があるのだが、

それ以外にも延命長寿の水としても近隣の人達が汲んでいくのである。



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この先にあるのが、上古の庭と曲水の庭である。すでにみた、蓬莱の庭と併せて松尾大社・松風苑の三庭といい昭和の庭師と言われる、重森三玲の作庭になるものである。