『雨の木次線』(平成26年(2014)発売)
作詞:佐藤 四朗、作曲:弦 哲也、歌:永井 みゆき
永井みゆきは平成4年(1992)「大阪すずめ」でデビューし、これが25作目のシングル曲である。
「いつかあなたと 来るはずの 横田 亀嵩 三井野原 雨の木次よ はぐれて一羽 越えて行くのか あの峰を 濡れた翼じゃ 重たかろ」と木次線の駅が登場する。

01あめつちmid
木次(きすき)線は、山陰本線の松江「宍道」駅から、芸備線の広島県「備後落合」駅までの81.9Kmを結ぶ、全線単線のJR西のローカル路線である。
大正5年(1916)に、簸上(ひかみ)鉄道によって開業され、昭和12年(1937)国鉄木次線として全線が開通する。
列車は「宍道」駅を出ると、すぐに南下し「南宍道」を過ぎると、最大25‰(パーミル)の勾配と半径161mの急勾配の峠を越え「加茂中」駅に到着する。
ここで東に回り「播屋」「出雲大東」「南大東」を経由して「木次」駅に到着する。
木次は斐伊川が近くを流れ、春には斐伊川堤防に桜が咲き誇り桜の名所として知られ、トロッコ列車「奥出雲おろち号」が平成10年(1998)から運行されていたのだが、令和5年(2023)に車両の老朽化に伴い運行が終了された。

02亀嵩(1)mid 03八川mid
         亀 嵩                  八 川
木次からは久野川の渓谷を25‰の勾配で走り、「日登」「下久野」を経由して、木次線最長の下久野トンネル(2,241m)を通過する。
このトンネルを走行する際に「オロチの嘶(いなな)き」と形容される独特な走行音が聞こえるという。
「出雲八代」を通過し「出雲三成」から、斐伊川に沿って南下し、「亀嵩」を経由するために亀高川に沿って走ることになる。
亀嵩という名を聞くとすぐに浮かぶのが、松本清張の「砂の器」である。
砂の器は、
東京鎌田の操作場で殺害された男が残した東北なまりの「カメダ」という言葉を手掛かりに、二人の刑事の捜査と犯人の動静を描いたもので、そのなかで「亀嵩」が重要な鍵を握って登場するのである。
「カメダ」が人の名ではなく秋田の「羽後亀田」と推理したことで捜査は大きく進展をし、「カメダ」は出雲の「亀嵩」で、被害者は元巡査であることを突き止める。
捜査線上に新進気鋭の作曲家が浮かび上がり、この人物の過去を辿ってゆくと、父がハンセン病にかかり村を追われ、父と巡礼姿で放浪の旅を続け「亀嵩」で巡査に助けられるのである。
その後、過去の幼少期の生活を隠し生きてきて、現在の栄光と輝かしい未来と、過去との繋がりとを決別するために、偶然再開した恩人の元巡査を殺害するのである。
たしか映画のラストシーンでは、父と子が巡礼姿で波打ち際を歩いている場面があったように記憶しているのだが・・・
映画での亀嵩駅は亀嵩駅ではなく八川駅に亀嵩の駅名を掲げて亀嵩駅として撮影したという。

04出雲横田mid
「亀嵩」を過ぎ「出雲横田」となる。
「出雲横田」がある地は、須佐之男命が退治したというヤマタノオロチ伝説があることから「奇稲田姫(くしいなだひめ)」が駅の愛称となっている。
駅舎にあった説明には、
『この駅の建物は、大社駅と共に日本でも珍しい構えの一つである。
出雲大社とこの地、横田の稲田神社とがゆかり深いところから、大社駅になぞらえて神社建築の美しさを取入れたものである。(中略)
稲田神社の祭神、稲田姫命は出雲大社の祭神である出雲太古の國土経営の完成者であった大國主命の祖神、須佐之男命の妃である。
須佐之男命は、簸(ひ)の川上、鳥上の峯の麓、この横田に於て、暴威を振った鉄山族を討伐し、この地の先住豪族の娘、稲田姫を妃として、出雲の國土開拓の先駆者となったのであり以来、今日に至るまで、この地には品質の優れた砂鉄を産し、戦前は日本刀の唯一の材料となり、戦後は世界に誇る特殊鋼の原料となっている。』とあった。

05出雲坂根スイッチバックmid 06おろちループmid
       スイッチバック                おろちループ
「八川」を過ぎると30‰の急勾配となり、「出雲坂根」(標高564m)から「三井野原」(標高726m:JR西日本で一番高い駅)までの標高差162mを上るために、列車の進行方向を2回、前後に切り替えながら、逆Z型にジグザクに上ってゆく。
その線路が三段になっていることから三段式スイッチバックと呼ばれ、この間でそれを体感できるのである。
スイッチバックを越え、中央坂根トンネルを通過すると国道314号線の高低差105mを一気に駆け上がる二重ループの「出雲おろちループ」を見ることが出来る。
やまたのオロチがとぐろを巻いているように見えることから、その名が付けられたという。
「三井野原」を過ぎると広島県に入り、西城川に沿って「油木」を通過し、芸備線との分岐駅である「備後落合」に到着する。
1日に10本しか運転しないダイヤ運行形態で、松江の「宍道」から広島の「備後落合」までの直通列車は2本の運転である。
宍道から備後落合までは約3時間を要し、雨の木次線を列車にゆられながら、のんびりと旅するのも一興かもしれない。

ちなみに「新聞からご当地ソングが聴こえてくる」の島根のご当地そんぐは、
『いのちの歌』(平成21年(2009)発売)
作詞:Miyabi(竹内まりや)、作曲:村松 崇継ぐ、歌:茉奈 佳奈 である。