ご当地そんぐは、
『少年の海』(昭和50年(1975)発売)
作詞:千家 和也、作曲:都倉 俊一、歌:山口 百恵
01桂浜mid
この歌は、山口百恵が「伊豆の踊子」につぐ主演映画として、昭和50年(1975)に撮られた「潮騒」の主題歌である。
ホリプロ創立15周年の記念作品で、映画は170万人をを動員したのだが、主題歌「少年の海―出逢い―」は流行らなかった。
テレビでも殆ど歌われることがなく、百恵ファンの知る人ぞ知るという歌であった。
「潮騒」は三島由紀夫の小説を映画化したもので、鳥羽市の沖(というよりも、伊良湖岬に近い)にある神島(小説では歌島)を舞台に、漁師と海女の純愛が成就するまでを画いた、三島の小説では珍しい純愛ものである。
その中で、「歌島の監的哨跡(小説では観的哨跡)で待ち合わせた二人が、先に着いた新治(三浦友和)が眼を覚ますと、焚き火の向こうに初江(山口百恵)が肌着を脱いで乾かしている。
裸を見られた初江は、「その火を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」と、火を飛び越した新治と初江は裸のまま抱き合うのである・・・」という下りがある。
平成25年(2013)、NHKの朝どら「あまちゃん」の劇中歌として歌われた「潮騒のメモリー」その中で「来てよ その火を飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー」という歌詞が出てくるのだが、小説「潮騒」と関係があるやら、ないやら・・・

02神島mid
鳥羽の海には、歴史ロマンの「答志島」、江戸川乱歩ゆかりの「坂手島」、日本最古のレンガ造りの灯台がある「菅島」そして、古くから神が宿ると信じられてきた「神島」と4つの島があり、潮騒の舞台となったのが「神島」である。
神島は、鳥羽港の北東14Km、伊良湖岬の西方3.5Kmの伊良湖湾口にあり、周囲3.9Km、面積0.79㎢の島である。
島には潮騒の舞台となった神島灯台や監的哨跡(かんてきしょうあと)などがあり、三島由紀夫も取材でこの島を訪れたという。

03神島灯台mid
神島灯台は「潮騒」のラストシーンで知られる灯台で、古来から、神島と伊良湖岬の間は「阿波の鳴門か、音戸の瀬戸か、伊良湖度合が恐ろしや」と歌われる日本の海の三大難所といわれる水道であった。
明治41年(1908)に、伊良湖水道で戦艦「朝日」が座礁したことで、灯台の設置が急務となり、明治43年(1909)に神島に灯台が設置され点灯が開始される。
「日本の灯台50選」に選ばれ、昭和38年(1963)まで灯台守がいたが、現在は無人の灯台で、昭和42年(1967)に、高さ11mの鉄筋コンクリート造となり、海面から114mの高さから19海里(35Km)を照らし、海の安全を守り点灯されている。

04監的哨跡mid
監的哨跡は神島の東部に位置し、潮騒のクライマックスに登場する建物である。
監的哨(かんてきしょう)は、縦横7.5m、高さ7mの二階建の鉄筋コンクリート造りで、伊良湖から撃つ大砲の試着弾の弾着観測をする施設で、正式には「陸軍伊良湖試験場観測所」と言い、昭和4年(1929)に建設されたものである。
説明板に、
『神島監的哨は昭和4年(1929)に旧陸軍の軍事施設として、愛知県の伊良湖から撃った大砲の試射弾の着弾点を確認するために建てられました。
建物は縦横7.5m、高さ7mの2階建てで、コンクリートには神島の石も使用されたといわれています。
昭和20年に第二次世界大戦が終戦し、試砲場の消滅とともにその役目を終えました。
この監的哨は三島由紀夫の小説「潮騒」のクライマックスシーンの舞台であり、風の日に主人公・新治と初江はお互いの愛を確かめ合うシーンに登場します。』
                          出典:【監的哨の説明板】より

05潮騒の碑mid
潮騒に画かれた場面は、
『このとき急に嵐が、窓の外で立ちはだかった。
それまでにも風雨はおなじ強さで廃墟をめぐって荒れ狂っていたのであるが、この瞬間に嵐はたしかに現前し、高い窓のすぐ下には太平洋がゆったりとこの持続的な狂騒をゆすぶっているのがわかった。
少女は二三歩退いた。出口はなかった。コンクリートの煤けた壁が少女の背中にさわった。
「初江!」と若者は叫んだ。「その火を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」少女は息せいてはいるが、清らかな弾んだ声で言った。
裸の若者は躊躇しなかった。
爪先に弾みをつけて、彼の炎に映えた体は、火のなかへまっしぐらに飛び込んだ。』とある。

「潮騒」の映画は5本撮られている。
青山京子・久保明「潮騒」昭和29年(1954)東宝・監督谷口仟吉
ロケ現場には三島幸夫も行っており、この映画を「映画の成功は配役の成功にあったと思われる。都会的な久保君よりも、青山嬢のほうがそう適役だった。」と語っている。
潮騒の映画ではこれが秀逸だという人は多い。
吉永小百合・浜田光夫「潮騒」昭和39年(1964)日活・監督森永健次郎
小野里みどり・朝比奈逸人「潮騒」昭和46年(1971)東宝・監督森谷伺郎
無名の信心が主人公を演じたもので、賛否が分かれる映画である。
山口百恵・三浦友和「潮騒」昭和50年(1975)東宝・監督西河克己
掘ちえみ・鶴見辰吾「潮騒」昭和60年(1985)東宝・監督小谷承靖