堀川今出川東入ルに白峯神宮がある。
今出川の通に面した所に鳥居が建っていて、その前は車が引っ切り無しに通る賑やかな通なのだが、ひとつこの鳥居を潜ると、そこは今迄の喧騒とは打って変ったように静かな佇まいをみせる。

01鳥居mid
白峯神宮は幕末の動乱期に、第121代孝明天皇が、保元の乱で敗れ、讃岐の国に流され、その地で果てた崇徳上皇を慰霊し、未曾有の国難に加護を得んが為に、その霊を京都に移すよう徳川幕府に下命するが、志半ばで崩御する。
明治天皇はその意思を継ぎ、宮地を和歌・蹴鞠の公卿「飛鳥井家」の跡地に決め、明治元年(1868)に、讃岐の白峯稜より御霊を迎えて創建される。
その後明治6年(1873)には、奈良時代に僧道鏡と恵美押勝の争いに巻き込まれ、淡路島に配流された第47代淳仁天皇を共に祀り祭神とした。
(※保元の乱は、子が親を斬り、甥が叔父を斬るという骨肉相打つ無残な戦いであり、この三年後に平家と源氏が覇権を争う平治の乱が起こり、平家が政権を握り武士の時代へと進んでいく。)

02拝殿mid
駒札には、
『当神宮は、崇徳(すとく)天皇及び淳仁(じゅんにん)天皇を祀る。
明治天皇は父孝明天皇の遺志を継ぎ、保元の乱により讃岐国(香川県)へ配流になった崇徳天皇の慰霊のため、明治元年(1868)讃岐の白峯陵より神霊を迎えて、創建された。
次いで明治6年(1873)には奈良時代に僧道鏡と恵美押勝の争いにより、淡路島に配流の淳仁天皇の神霊を迎えて合祀された。
この地は蹴鞠・和歌の宗家飛鳥井家の邸跡で、同家の守護神「まり精大明神」が祀られ球技愛好者に崇敬されている。
他に「伴緒社(とものおしゃ)」「潜龍社(せんりゅうしゃ)」などの境内社があり、「おがたまの木」は京都市の天然記念物に指定されている。』
                          出典:【白峯神宮の駒札】より

03オガタマノキmid
境内には京都市指定の天然記念物「オガタマノキ」があり、駒札には、
『慶応4年(1868)創建の、ここ白峯神宮の社地は、蹴鞠と和歌の家元であった飛鳥井家の邸跡にあたる。
このオガタマノキは、樹齢が数百年と考えられることから飛鳥井家の邸宅であった時代に植えられたものと見られる。
オガタマニキは、春に芳香のある花を咲かせ、その名は招霊(おきたま:神霊を招く)がなまったものという説もある。
社寺の境内によく植えられる木であるが、この木が京都市内で最大のものである。
昭和60年(1985)6月1日、京都市指定天然記念物に指定された。』
                   出典:【白峯神宮のオガタマノキの駒札】より

04蹴鞠の碑mid
白峯神宮の地は、飛鳥井家の邸宅があった所である。
飛鳥井家は、蹴鞠と和歌に優れ、代々、蹴鞠と和歌を家職とした公家であった。
明治維新後に東京に屋敷を移し、その跡に白峯神宮が建てられ、飛鳥井家が祀ってきた「精大明神」が「鞠の守護神」とされたことと蹴鞠との係わりから、サッカーを始めとする「球技の神」として崇められ、その道で上手になりたい人の参拝が絶えない。
蹴鞠の碑の碑文には、
『蹴鞠保存会は、明治天皇の「蹴鞠保存」の思召しにお応えして明治36年に創立され、来る平成15年に百周年を迎える。
この間全員は一貫して蹴鞠道の精神と古技の伝承保存及び、その普及に努めて来た。
白峯神宮の鎮座在しますこの地は蹴鞠道の宗家、飛鳥井家邸宅の跡にて、斯道の守護神、精大明神の御社も鎮まります。
此所に百年の歩みの道標として蹴鞠の碑を建立して国家安泰、万年平和、本会の使命達成を記念するものである。』
                          出典:【蹴鞠の碑の碑文】より

05飛鳥井mid
その飛鳥井家の屋敷内に、「飛鳥井」という名水があった。
清少納言が枕草子のなかで、
「井は、ほりかねの井。玉の井。
走り井は逢坂なるがをかしき。(走り井は逢坂にあるのが、面白い)
山の井、さしも浅きためしになりはじめけむ。(山の井は心の浅い例にひかれるようになったのだろうか)
飛鳥井「みもひも寒し」とほめたるこそをかしけれ。(飛鳥井は水の冷たさを褒めたのが面白い)
千貫の井。少将ノ井。櫻井。后町(きさきまち)の井。」
と九つの名水の井戸をあげているのだが、その井戸の中で唯一今に残るのが「飛鳥井」のみである。
現在、手水舎から流れ出るのは、地下35mから汲み上げた水で、いまも「みもひも寒し」の水なのである。
この飛鳥井から50mほど離れた所に、潜龍大明神の御神水といわれる「潜龍井」がある。

06欽仰之碑mid
白峯神宮を訪ねたのは10数年前(2008.10.15)で、その時は「崇徳天皇欽仰之碑」という石碑のみが建っていたのだが、その後、白峯神宮創建150年を記念して、石碑の横に崇徳院が詠んだ「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」の歌碑が建てられ、瀧石から流れ出る水を現した、「浄心の庭」という小さな枯山水が造られた。

白峯神宮(京都市上京区今出川通堀川東入飛鳥井町261番地)
京都駅から
▼「B1」乗り場から9系統で『堀川今出川』下車(所要27分)
「堀川今出川」