智恵光院通五辻上るに、本隆寺の長い土塀が続いていて、瓦が塗り込められた土塀は、四方でその趣が違っている。
その壁に沿って南に少し歩くと、本隆寺の山門がある。ここから本隆寺に入る。

01山門mid
本隆寺は、日蓮を祖とする分派で日真を派祖とする、法華宗真門流の総本山で、慧光無量山本妙興隆寺という長い名が正しい名称である。
開山は、中山大納言親通卿の子「日真」で、長享2年(1488)に四条大宮に創建されたが、天文法乱により焼失し、天文11年(1542)に現在の地に再建された。
さらに京都御所炎上の類火によって焼失したが、明暦3年(1657)に再建された。
享保15年(1730)と天明8年(1788)の二度の大火では、西陣一帯が焼けてしまったのだが、この寺は鬼子母神の霊験によって焼失を免れ、以降「不焼寺」(やけずのてら)と呼ばれた。
爾来、この寺の鬼子母神は、火伏せの鬼子母神と云われ、火除けの信仰を集めている。

天文法乱とは、
1536年、天台宗比叡山の僧兵集団が宗教問答を契機に京都の法華一揆と対立し、洛中洛外の日蓮宗寺院21本山を焼き払った事件。天文法乱。法華宗が栄えていることに反感を持っていた比叡山は、隆盛を誇った法華一揆の壊滅に成功。以後6年間、京都において日蓮宗は禁教となった。
                      出典:【日本辞典 天文法華の乱】より

02本堂mid
駒札には、
『法華宗真門流の総本山で、正しくは慧光無量山本妙興隆寺という。法華宗京都八本山の一である。
開山は中山大納言親通卿の子・日真で、後に、柏原天皇より日蓮聖人の正当な流れであることを証する大和尚(だいかじょう)の称号が下賜された。
当寺は、長享2年(1488)に四条大宮に創建されたが、四代日映のとき、天文法乱により焼失し、天文11年(1542)に現在地に再建された。
十代日遵(にちじゅん)のとき、京都御所の炎上により類焼し、明暦3年(1657)に名匠坂上作左衛門が再建した。
享保15年(1730)と天明8年(1788)の二度の大火では、西陣一帯が焼野原となったが、当寺の本堂と祖師堂は、奉祀している鬼子母神の霊験によって焼失をまぬがれ、それ以降「不焼寺(やけずのてら)」と呼ばれるようになった。
三千三百坪の境内には、西陣五井の一つの名井「千代野井」や、松葉を枕の下に敷くと、子どもの夜泣きがやむといわれる「夜泣止の松」がある。
本堂、祖師堂、客殿、番神堂、鐘楼、経蔵、宝蔵、南門、塔頭八ヶ院等の諸堂を有し、宝物として、日蓮上人真筆大曼陀羅、法華玄論、十六羅漢絵像、名器三管、法華経七万字版木等を蔵している。』
                           出典:【本隆寺の駒札】より

03松mid
本隆寺の境内、祖師堂の前に、子供の夜泣きが止まるという「夜泣止めの松」がある。
大永4年(1532)元旦の朝、5世日諦上人がお経を読むために本堂に向うと、一人の婦人が嬰子を上人に託し養育を頼み世を去った。
母のいなくなった嬰子は、夜中に母を慕い泣くことが度々あった。そんな時に、上人は嬰子を抱いてこの松樹の周りを廻ると、不思議にも夜泣きがたちまちのうちに止んだという。
この話が世に伝わり、夜泣きに悩む母親がこの松の皮や葉を持ち帰り、嬰子の枕の下に敷くと夜泣きが直ると言われ、いつの頃からかこの松を「夜泣止めの松」と呼ぶようになった。
この嬰子が長じて、後の7世日脩となったのである。天正8年(1580)に正親町天皇から法印の号を得ている。
駒札には、
『大永4年(1532)元旦の朝、當山五世日諦、看経のため昇堂するや、一婦人、嬰子を上人に託し、養育を乞う。
夜中に嬰子の母を慕って泣くこと屡々(しばしば)なり。
上人抱いてこの松樹の周囲を巡るに、不思議なるかな、夜泣きたちまち止む。世人呼んで「夜泣止松」という。
嬰子長じて知恵抜群、学識一世に高し。後に當山七世の名僧日脩(にっしゅう)となる。
天正8年(1580)正親町天皇より「法印」の称号を受く。』
                        出典:【夜泣止松由来の駒札】より

04千代ノ井mid
本堂の前に今は枯れて井桁のみが残る「千代ノ井」がある。
この井戸は、無外如大尼(むがいにょだいに:鎌倉中期の尼僧で、安達泰盛の娘、千代野)が、月夜の晩に、この井戸から水を汲んでいると、桶には月影が水にゆれていたのだが、桶の底が抜けて水と共に月影も消えてしまったのを見て、悟りを開いたという伝えがあり、
「とにかくに たくみし桶の 底ぬけて 水たまらぬは 月も宿らず」と詠んで仏門に入ったという。
またこの井戸は天明の大火で、本堂を火から守ったと伝えられている。

本隆寺(京都市上京区智恵光院通五辻上ル紋屋町330)
京都駅から
▼「A3」乗り場か206系統で『千本今出川』下車(所要29分)
「千本今出川」から、徒歩10分