京都駅から5系統のバスに乗り「一乗寺下り松町」か、叡山電車の一乗寺」で降り、東に10分ほど歩くと「詩仙堂」、その横に「八大神社」がある。

01武蔵像mid
八大神社は、永仁2年(1294)に創建された神社で、表鬼門に位置し御所を守護する神社であるのだが、宮本武蔵が吉岡一門との一乗寺下り松での決闘の時に、立ち寄った神社としてのほうが有名である。
一乗寺下り松での吉岡一門との決闘に際して、全身全霊をかけ対峙しようと考えていた武蔵が、一人で吉岡一門の多人数との闘いに勝てるのだろうかと、ふと弱気になった時に、神頼みを考えたとしても不思議ではないのだが・・・
八大神社には、一乗寺下り松の古木と、その側に、剣聖宮本武蔵のブロンズ像が建つ。

02鳥居mid
宮本武蔵と八大神社との関わりは、吉岡清十郎を斃し、弟の伝七郎を討たれた吉岡一門が、武蔵を討つべく一乗寺藪之郷下り松で決闘を挑むのである。
ここに至るには、「きらら越の叡山道」そして「高野川に沿った道」また「滋賀山越えの裏街道」と三つの道があるのだが、武蔵はいずれの道をとらず、違った道を選ぶ。
しばらく歩き、一乗寺下り松の辻が見渡せるようになり、吉岡一門の人影が見えた時に、傍らに石の鳥居をみるのである。それが「八大神社」である。
ここで武蔵は、御手洗の水で口をすすぎ、刀の柄糸にきりを吹き、襷をかけ、鉢巻をしめるのである。
そののち、拝殿の鰐口に手をかけたのだが、「いや、待て」と鰐口の鈴はならさず、神に恃もうとするのをやめるのである。
そして八大神社から急坂を駆け下りて、吉岡一門の決闘の場所、一乗寺下り松へと向かう。
後に、このときの思いを、
「我れ神仏を尊んで神仏を恃(たの)まず」と語っている。
                      参照:【吉川英治全集・宮本武蔵】より


03古木mid
また武蔵の象の横には、慶長9年(1604)武蔵と吉岡一門との決斗を見たであろう、一乗寺下り松の古木が祀られている。
昭和20年頃に枯れてしまい、その一部が、ここに保存されているのである。
現在の一乗寺下り松は4代目の松である。

ちなみに、吉川英治の宮本武蔵は、
「-どうなるものか、この天地の大きな動きが。
もう人間の個々の振舞いなどは、秋かぜの中の一片の木の葉でしかない。なるようになってしまえ。」と始まり、
小次郎と巌流島での闘いの後、「波騒(なみざい)は世の常である。
波にまかせて、泳ぎ上手に、雑魚は歌い雑魚は躍る。けれど、誰か知ろう、百尺下の水の心を。水の深さを。」で幕を下ろすのである。

04下り松mid
決闘が行われた地「一乗寺下り松」は、八大神社から坂を200mほど下りた所、石の大鳥居の斜め向かい側にあり、「宮本吉岡決闘之地」の石碑が建っている。
駒札によれば、
『ここは、近江(現在の滋賀県)から比叡山を経て京に通じる平安時代からの交通の要衝で、この松は古くから旅人の目印として植え継がれ、現在の松は四代目に当たる。
江戸時代はじめ、この地で、剣客・宮本武蔵が吉岡一門数十人と決闘を行った伝説が有名で、ここから東に約三百メートルの所にある八大神社の境内に、決闘を見下ろしたという初代の松の古株が保存されている。
武蔵は決闘に向かう途中、同神社で神頼みをすることを思い立ったが、神仏に頼ろうとした自分の弱さに気付き寸前でやめたという話もある。
平安中期から中世にかけ、この辺りにあった一乗寺という天台宗の寺が地名の由来となったが、南北朝の動乱以後に衰えて廃絶した。
傍らの記念碑は、大正10年(1921)に広島県呉の剣士・堀正平氏により建立されたものである。
                        出典:【一乗寺下り松の駒札】より

05本殿mid
八大神社は、素戔嗚尊(すさのおのみこと)・稲田姫命(いなだひめのみこと)・八王子命(五王子三王女)を御祭神とし、その駒札によると、
『当社は永仁2年3月15日勧請(今より約700年前)(西暦1294年)祇園八坂神社と御同神に坐し古来より北天王(北の祇園)と称し皇居守護神十二社中の一にして都の東北隅表鬼門に位置し、方除、厄除、縁結び、学業の神として世の信仰厚く、後水尾天皇、霊元天皇、光格天皇、修学院離宮行幸の砌り御立寄り白銀等御奉納あり
明治6年10月5日、藪里牛頭天王社(永享10年11月28日勧請)(西暦1438年)
明治7年3月5日 舞来寺八大天王社(永享10年9月朔日勧請)(西暦1438年)を合祀す。
大正13年幣帛供進神社に指定せられる
因に 剣聖宮本武蔵が 吉岡一族と決斗せし当時の「下り松」の古木は本殿西に保存してある。』
                       出典:【八大神社由緒の説明書】より

八大神社(京都市左京区一乗寺松原町1番地)
京都駅から
▼「A1」乗り場から5系統で『一乗寺下り松町』下車(所要49分)
 「一乗寺下り松町」から、徒歩7分
▼叡山電鉄で『一乗寺』下車(出町柳から所要5分)
 「一乗寺」から、徒歩10分