地主神社には「恋占いの石」の他にも、ご利益のある社があるので、紹介してみよう。
おかげ明神
この明神さんは、どんな願いでも聞き届けてくれるというのだが、叶えてくれる願いは一つだけで、「一願成就」の守り神である。
その左後ろにある杉の木は、「いのりの杉」と呼ばれ、昔、丑の刻参りで藁人形が討ちつけられた五寸釘の跡が残っているという。
縁結び・良縁祈願の神社の中に、女の情念が渦巻く所があるというのも、歴史の一端を伺わせ興味深い。
駒札には、
『どんな願い事も、一つだけなら必ず「おかげ(ご利益)」がいただけるという一願成就の守り神様。
特に女性の守り神として厚い信仰を集めている。
また後方のご神木は「いのり杉」とも「のろい杉」ともいわれ、昔、女性の間で流行した「丑の刻参り(うしのときまいり)」に使われた。
白の衣に頭はローソク、顔は真白に化粧をし、午前二時「丑の刻(うしのとき)」に相手にみたてたワラ人形を、人知れずこのご神木にくぎで討ちつけ呪いの願をかけたという。
その五寸くぎの跡が、現在も向って左後方にに無数に残っている。』
出典:【おかげ明神の駒札】より
撫で大国
撫でる場所により、様々なご利益が得られるという大国さんである。
『小槌・・・良縁、開運、厄除け/あたま・・・受験必勝、成績向上/おなか・・・安産、子宝/たわら・・・出世、土地守護、家内安全、夫婦円満/福袋・・・金運、商売繁盛/手・・・勝運、芸事上達/足・・・旅行安全、交通安全
病気回復は病いのある所をお撫で下さい。』とある。
水かけ地蔵
駒札には、
『このお地蔵さまは、長い年月地主神社の地中にて修行され、近年お出ましになった徳の高いご利益のあるお地蔵さまです。
厳しい難行・苦行のためお顔や、お体をなくされていますが、それだけに皆さまの願いをかなえて下さる不思議な力をお持ちです。
お地蔵さまに、お水をかけて、お願いして下さい。
必ず皆さまの願いをかなえて下さいます。』
出典:水かけ地蔵さまの駒札】より
地主桜
この桜は、一重と八重の花が同じ木に咲くという珍種で、日本で文字種神社にこの一本が現存する。
弘仁2年(811)、52代嵯峨天皇行幸のみぎり、あまりの美しさに牛車を三度引き返したことから「車返しの桜」とも呼ばれている。
また謡曲にも地主権現の桜として詠われており、
『謡曲「田村」では、東国の僧が清水寺に詣で地主の桜を賞でると、地主権現の花守は、僧賢心が坂上田村麿を檀那として清水寺を建てた由緒を語り、田村堂の中に消える。
僧の読経に、田村麿が現れ、東夷の平定を成就し得たのは、観音の仏力のおかげと称えた。』という話と……
『謡曲「熊野(ゆや)」では、平宗盛の愛妾、熊野が清水寺の音羽の山桜や地主の桜の花見の供をし、故郷の母の病を案ずる歌を詠み、心打たれた宗盛が熊野の帰郷を許す。』という話である。
いずれの謡曲にもこの地主の桜が盛り込まれており、その昔からここの桜は世に知られていたのである。
出典:【謡曲の中の地主の桜の駒札】より
コメント